リリザの町で、1人の少女と出会った。
俺のことを、ハーゴン征伐の旅に出た王子かと聞いている。
噂も何も、実際そうだから素直に答えることにした。
「はい、そうですけど…」
嘘松鑑定士だ…。
実際の真偽とは関係なしに、少しでも疑わしいと思ったことに対して「嘘松」と返すことによって「見破った自分」という自己満足と、「仮に真実だとしても目を逸らせる」という自己防衛を同時に行う、攻防一体の思考停止テクニックの使い手だ…。
そっちがそうならこっちも考えがある。
王子が…征伐に…。
そういう噂があるんですか…。
「いいえ、違いますが?」
俺は嘘をついたことになるけれど、そもそも彼女が俺を嘘つきだと決めつけてくるのが悪いのだ。
言ってみればこれは、嘘松鑑定士を断罪するための正義の嘘なのだ。
無敵かよ。