バレンタインの小さな奇跡

はじまりは昨日の朝。見知らぬアドレスから1通のメールが来た。

口調からすると女性のようだが「またご飯に行こう」とは…?最近一緒にご飯を食べた女性といったら母親か妹くらいだ。
あとセーラーマーズの格好をした北川景子がアツアツの北京ダックを肌に押し付けてくる夢は見たけれど…まさか、夢から景子が抜け出して…!?

どうあれ、この人が北川景子だという確証を持てないうちに「今度は麻婆豆腐をぶっかけてください」とお願いするわけにはいかない。もし母親だった場合最悪だ。
なので無難にこう返した。

すぐに返事がきた。
要点を書き出すとこうだ。

  • 送り主は「松本さん」というらしい
  • 「松本さん」は俺のことを「しんくん」だと思ってメールをしている

俺は危うく松本さんに恥ずかしいお願いをするところだったのか。
しかし俺の思い当たる松本さんなんてB’zくらいだし、B’zの松本は相談される側のはずだし、そもそも俺はしんくんではない。じゃあ誰なんだ。

もし「ダンプ松本さんがタイガー・ジェット・シンくんに悪役レスラーの役作りについて相談するメール」だとしたら。ヘタにダンプを挑発をすると俺の全身が血まみれの「真紅ん」になってしまう。それは避けたい。

最悪のケースを想定し、なるべく丁寧に返した。

貴女がダンプかダンプでないかはこの際問題ではない。
俺たちは元々交わるハズのない運命だった。それが元に戻るだけのこと。
さようなら松本さん。しんくんと仲良くしろよ…。

なのにまた返事がきた。
メールには、今回の経緯についての説明があった。

  • 松本さんはアドレスを間違えて俺にメールしてしまったらしい
  • 松本さんは俺のことを女性だと思っているようだ

このまま無視してもよかったけれど、奇妙な「縁」のようなものを感じた俺は返事をすることにした。

ところで今俺は「奇妙な縁」と言ったけれど、世間にはそんな思いに付け込んだ迷惑メールがたくさんあるらしい。
ためしに「迷惑メールチェッカー」というサイトを覗いてみると、例としてこんなメールが出てきた。

ここでもう1度、冒頭の松本さんのメールを見てみよう。

いや、まだ分からない。まだ迷惑メールと決まったわけじゃない。
松本さんって、たまたま迷惑メールと同じ文章を送っちゃうタイプの人なのかもしれない。

なんて考えているうちに返事がきた。

答えはもう、決まっている。

バレンタインに生まれた小さな出会いの奇跡…進展があったらお知らせしますネ…。


後編