運命と哀し過ぎる予感~バレンタインの小さな奇跡・完結編~

前編


出会いは今年のバレンタイン。
君は、間違えて俺にメールしてきたね。

本当にびっくりしたよ。
でも、そのお陰で出会うことができた。

メールをする毎に距離は縮まって、呼び方も変わってきたね。

俺は「世界の山ちゃんと呼んでくれ」とお願いしたのに、君は気安く「山ちゃん」と呼んできたね。

それから更にメールを交わして、俺たちはどんどん親しくなっていったね。

敬語をやめた結果俺がおぼっちゃまくんだと判明しても、君は何も変わることなく接してくれた。本当にうれピギャースだったよ。

それなのに。
せっかく心が通いあっていたのに。
悲劇は起こってしまった。

女優の卵だった君がオーディションに受かった本当におめでたいタイミングで、俺が携帯を乗っ取られてしまうなんて。

時は戻せない。過ちさえも。運命って残酷だね。

君のいない世界で世界の山ちゃんなんて名乗っても何の意味もない。
俺は最早、ただの山ちゃんだよ。
そんなただの山ちゃんから、最後に伝えなくちゃいけないことがある。

俺…君に嘘をついていたんだ。

「手羽先は週8で食べている」なんて言ったけど、実は3ヶ月に1度食べるか食べないか程度なんだ…。
そして、本当はおぼっちゃまくんでもないんだ…。
届かない懺悔なんてズルいかもしれないけれど、本当にごめんなさい。

それでも、そんなただの山ちゃんでも。いや山ちゃんでもないけれど。
もし叶うなら、はるちゃんのこと、遠くから応援させて欲しい。
それと、できたら謎のサイトへの執拗な招待メールも止めて欲しいな。

はるちゃん…。

さいならっきょ…。