俺の心の3つの「シビレた歌詞」

様々なテーマの「俺の心に浮かんだ3つ」を挙げていきます。
今回は「シビレた歌詞」。そんな歌詞は沢山ありますが、3つ。そしてその中でも印象深いフレーズを掘り下げたいと思います。

松田聖子『瞳はダイアモンド』

作詞は松本隆さんです。いきなりレジェンド。
繊細な言葉遣いで情景・心情を描かせたらこの方の右に出る者はいないんじゃないかと思います。
『瞳はダイアモンド』は、そんな松本隆さんの真骨頂だと思います。

愛してたって 言わないで
映画色の街 美しい日々が切れ切れに映る
いつ過去形に変わったの?

「愛してた」って言わないで…。いきなり悲しいお願い。
一体何があったの?どしたん?話聞こか?と思わせてからの「映画色の街」というキラーワード。だって「映画色」ですよ。何色だって話ですよ。映画色、絵の具にありました?ないでしょ。でも「映画色」なんです。
受け取る側に解釈を委ね、十人十色の「映画色」を想起させてくれる素晴らしい表現。そして”映画”に例えるということは、彼女は今、自分が見ている景色を”思い出を映すスクリーン”に見立ててるんでしょうね。

そんな彼女が見るスクリーンには「美しい日々が切れ切れに映る」んです。
「美しい」ってなんでしょう?形容詞って、状況を簡単に表現できるぶんヘタに使うと押し付けがましくなっちゃったりします。だからこそ、歌詞での使いどころが難しい。だからこそ、解釈一致の時に投げ込まれる形容詞というのはとんでもない破壊力を生み出すんだと思います。この「美しい」は、まさにそれ。彼女はきっと、街のあちこちに「美しい」思い出があって、それを思い出してるんでしょうね。

からの「いつ過去形に変わったの?」これが冒頭の「愛してたって言わないで」にかかってくるわけですよね。
どうして?私にとっては過去形ではないのに。「愛してた」なんて聞きたくないのに。

そんな心の機微を3行に詰め込んでるわけで。もう魔法。

布袋寅泰『POISON』

作詞は森雪之丞さんですね。
森雪之丞さんと言えば『CHA-LA HEAD CHA-LA』みたいな語感を大事にした駄洒落っぽい作品のイメージも強いけど、駄洒落じゃない「洒落た」作品も沢山あって、『POISON』もそんな作品じゃないかと、俺は思ってます。

Baby 銀の指環で

12時の針に手錠をかけろ

時間を止めた時から

物語の扉が開く

「Baby 銀の指環で12時の針に手錠をかけろ」こんな洒落てる歌い出しありますか。
銀の指環で12時の針に手錠をかけるのを許されてるのは、布袋 or 時計がルパンに見えるヤバい銭形警部だけでしょ。

で、そこから「時間を止めた時から物語の扉が開く」に続くこの巧さ。
そう、12時の針に手錠をかけちゃったんで時間は止まるわけです。なんと想像し易く、自然にストーリーが進むのか。この視線誘導の巧さは森雪之丞さんの真髄だと思います。この作品に限らず、森雪之丞さんの詞はイメージがスッと頭に入ってくる。

この詞の中での「俺」と「オマエ」は、恐らく道ならぬ関係なんでしょう。
だとしたら”指環”とはどういう指環なのか、”12時の針に手錠をかける=指環を外す”という行為にどういう意味があるのか…考えるほどに深みにはまっていく。とんでもねぇや。

T.M.Revolution『蒼い霹靂』

浅倉大介さんがプロデュースする楽曲を中心に歌詞を提供している井上秋緒さんが、浅倉大介さんの楽曲に提供した歌詞です。
『蒼い霹靂』は、くだけた口調で愚痴っぽい感じの歌詞の面白さもあるけれど、それより何より言葉遊び。

恋の中にある 死角はシタゴコロ

この歌い出しの歌詞が全てと言ってもいいくらい。
初見だと「なるほどな」くらいのフレーズだけど、ラストになって

恋の字の中に 四画のシタゴコロ

えっ?漢字の「つくり」のコト言ってる!?
ってことは、中盤に出てきた

愛の真ん中の ココロを揺さぶって

これもそうなの!?と。衝撃を受けましたね。
世の中に言葉遊びの歌詞は多々あれど「文字の構造で遊ぶ」っていうのは俺の知る限りなかったので。それこそ脳天に霹靂が落ちる思いでした。
もちろん言葉遊び全振りじゃなくて全体を通しての整合性もしっかり取れてるし。すごい歌詞だなと今見ても思います。あとすごいPVだなとも思います。