孤独の病院食・5日目

時間や社会に囚われず、病院で空腹を満たすとき、つかの間、彼は自分勝手になり、自由になる。
誰にも邪魔されず、気を遣わずものを食べるという孤高の行為。
この行為こそが、入院患者に平等に与えられた最高の癒し、と言えるのである。

※これは入院当時の記録であり、記事投稿時点で本人は退院しています。

  • 病院の朝4日目。看護師さんが「足りないでしょうけど…」と持ってきた。昨晩は病院を抜け出してお寿司を食べてしまったわけだけど。このシンプルなビジュアルは、そんな俺の調子こいた気持ちをフラットにしてくれる。
  • 今日の俺には「パンを上手に割る」という任務がある。そのためのプランも用意してきた。
  • 切れ目をイメージし、そのラインに沿って点々と割り箸しで穴を開けていく。
  • そして、その点を繋ぎ、大きな線を作る。要はミニ四駆の肉抜きにおけるピンバイスの使い方である。
  • 結果、大成功。ここにきてやっと「正解」を見つけた気がする。サラダとハムと玉子を挟むと、ちょっといいサンドイッチだ。
  • 調子に乗って2つとも同じ食べ方をしたらジャムがダダ余りしてしまったので、ヨーグルトに全ベット。結果的に贅沢なヨーグルトになった。看護師さん、朝食大満足です。

  • 既にトレーの一角からカレーのいい匂いがするが、ここは1つ我慢してお吸い物から。優しい味で慣らしておくの、大事。
  • 黄色いカップに入っているのは…出た、ゆるめのおかず改め固めのスープ。俺はもうコイツとの付き合い方を知っている。うまい。
  • カップに隠れたおかずは、酢豚のレンコン…から酢を抜いたような味わい。豚もないし、じゃあ別の食べ物じゃないかというツッコミはさておき、悪くはないな。
  • そしてメインは豚肉だ。鶏肉っぽくも見えたのでどっちか分からないまま食べたけど、美味いじゃないか。前回はポン酢風だったけど今回はごまだれ風だ。ここらへんでも変化を付けようとしてくれる調理師の方には頭が下がる。
  • そして緑のカップに入っているお前は、紛うことなきカレーちゃんだ。ひき肉、にんじん、きのこ。具材もスキのない布陣。当然激辛とは程遠いけれど、今の俺にはこういうカレーがお似合いだ。
  • 付け合せも、ピーマンに海藻、かつおぶしに…しらすも入ってる。たかが付け合せと侮れない1品。デザートのさつまいもも、持ち上げたらスライスアーモンドが入っていて「おお」と声が出てしまった。こういうひと手間が、俺を健康にしてくれるんだろう。ありがとうございます。

  • おからなんて食べるのはいつぶりだろうか。口の中の水分が持っていかれる感じが苦手だったけど、案外悪くない。でも口の中の水分が持っていかれるから、さっさと食べてしまおう。
  • 四角いのは…高野豆腐か。玉ねぎと、玉子。味付けもしっかりしてる。地域によっては凍み豆腐なんて呼んだりもするらしいけど、病人の身体にしみるなあ。
  • ここに来てからもやし君もわかめ君も何度となく顔を合わせているけど、微妙に味付けが違ったりして飽きずに済んでいるのはありがたい。今日は中華風だ。
  • メインは筑前煮風の煮物。別に筑前の生まれでもなんでもないけれど、こういう味はホッとするよなあ。とはいえ鶏肉もしっかり主張していて、満足度も高し。こうなってくるとご飯を大盛りで食べたくなってしまうのが、人間の欲深さなんだろうか。いや、人間じゃなくて俺か。不用意に主語を大きくするのはよそう。そして心を大きく持ち、隣の人のいびきに備えよう。新しく入ってきた人、すごいんだよなぁ。