近所の、知らない路を歩いてみたいと思った。
もうすぐこの街とお別れだと思ったら、自然と足が動き出していた。
いつもの商店街、いつも通り過ぎていたコインランドリー。
いつも真っすぐ歩いてきた道を、今日は脇に入っていく。
知ってる街のはずなのに、見たことのない景色。
ゆるやかな坂道に並ぶ、知らない家の、知らない表札。
壁一面黄色く塗られた家や、昔ながらの砂壁の家。
ヨーロッパ風の家や、コンクリ打ちっぱなしの家。
ひとつひとつに、営みがあるんだな。
去る前に触れることができて良かったけど、もうちょっとこの街のことチリンチリン!!!
チリリリリリリリンリリリンチリチリチリリリリリリン!!!!!!!
知らないおばさんが、知らない音量のベルを鳴らしながら、知らないスピードで知らない坂道を駆け下りていった。いや営みのクセ。