春に敗れる男

春が好きだ。
新緑が芽吹き、花が咲き乱れ、風も爽やかな、そんな春が好きだ。
好きなんだけど。だけれども。
俺はそんな春に勝てずにいる。

まず花粉症。
中学生時代、花粉症持ちの友人を「大変だな~」なんて思ってみていたけど、いつの間にか自分もそっち側の人間になっていた。
目がかゆい。えぐりたい。右手のナイフでえぐりたい。そしてそのままアイボンのプールに漬け置きして、一晩寝かせたものをはめこんで使いたい。
くしゃみが止まらない。つらい。毎回ともさかりえの『くしゃみ』が脳内で流れてくるのがつらい。風が吹けば 誰かがくしゃみする。彼女とあの人がどうやらLOVE LOVEらしいって。せつなさの木々たちが揺れてる My Heart。こっちはそれどころじゃねんだわ。

あと無限に眠い。
「春眠暁を覚えず」なんて云うけれど、そんなレベルじゃない。もはや冬眠に近い。
俺の1日を伊勢海老に例えるなら、元気な時間は可食部くらい少ない。こんなにピンと来ない例えを出してしまうほど、頭の調子も悪い。

あとなんか、ここ数年は体調も悪い。
眠さも相まって、ほぼ寝たきりみたいな日も割とある。

俺はこんなに春が好きなのに、春の方から年々拒絶されている。
関係修復を試みたいけど、頭も働かないから何していいかも分からないし、よしんば思いついたとしても実行する元気がない。完全に「詰み」ってやつなので、大人しく寝てやり過ごしたいと思います。脳内のともさかがアップを始めたのでくしゃみも出るんでしょう。せつなさの木々たちが揺れてる My Heart。